完全試合とは?ノーヒットノーランとの違いや歴代達成者16人を徹底解説
野球における投手の究極の到達点とされる「完全試合(パーフェクトゲーム)」。2022年4月10日に千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が28年ぶりの快挙を成し遂げた瞬間は日本中に熱狂を呼びましたが、プロ野球(NPB)の長い歴史においても達成者はわずか16人しか存在しません。
テレビ中継やニュースで耳にする機会はあっても、「ノーヒットノーランと何が違うのか」「どのような条件が揃えば成立するのか」を正確に把握できているファンは意外と多くありません。本記事では、完全試合の厳密な成立ルールから歴代達成者の記録、達成難易度が極端に高い構造的理由、さらには継投や高校野球における特例まで、野球観戦がより深くなる視点を交えて徹底的に解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:完全試合は「相手打者を1人も出塁させずに勝利する」記録であり、ノーヒットノーラン(四死球や失策での出塁は許容)よりも遥かに厳格な条件が課される。
- 要点2:日本プロ野球(NPB)における達成者は歴史上わずか16人のみ。2022年の佐々木朗希投手による達成は、21世紀初かつ28年ぶりの歴史的快挙となった。
- 要点3:投手の圧倒的な実力に加え、野手の無失策、審判のストライク判定、終盤の極限の重圧に打ち勝つ精神的強靭さが揃って初めて成立する。
完全試合(パーフェクトゲーム)の定義と成立する4つの絶対条件
野球規則において「完全試合(英語:Perfect Game)」とは、先発投手が試合開始から終了まで相手打者を1人も塁に出さず、無失点で勝利を収めることを指します。公認野球規則および日本プロ野球の公式記録基準において、完全試合が成立するためには以下の4つの条件をすべて満たさなければなりません。
第一に「無安打(ノーヒット)」であること。相手打線に単打・長打を問わず1本のヒットも許さないことが大前提となります。
第二に「無四死球」であること。四球(フォアボール)や死球(デッドボール)による出塁を一切与えてはなりません。カウントが3ボールになっても、そこからストライクゾーンへ投げ込んで打ち取る精密な制球力が求められます。
第三に「無失策(ノーエラー)」および「相手の無出塁」です。味方野手のエラーによる出塁はもちろん、打撃妨害、走塁妨害、さらには第3ストライクを捕手が捕球できずに発生する「振り逃げ」による出塁も許されません。投球内容だけでなく、チーム全体の守備力が完全にノーミスでなければ記録は消滅します。
第四に「チームの勝利と完投」です。規定のイニング(通常9イニング・打者27人)を投げ切り、自チームがリードして試合に勝利することが必須です。仮に9回まで相手を完全に抑えていても、味方打線が無得点で延長戦に突入した場合、降板したり途中で走者を出したりした時点で完全試合の権利は失われます。

【比較表】完全試合とノーヒットノーラン・完封の決定的な違い
「完全試合」「ノーヒットノーラン(無安打無得点試合)」「完封(シャットアウト)」は、いずれも相手を0点に抑える快挙ですが、その難易度と許容される出塁の範囲には明確な階層が存在します。
| 項目 | 完全試合 | ノーヒットノーラン | 完封勝利(シャットアウト) |
|---|---|---|---|
| 許容される被安打 | 0本(不可) | 0本(不可) | 何本打たれてもOK |
| 与四死球による出塁 | 0(一切不可) | 何個出してもOK | 何個出してもOK |
| 失策・妨害での出塁 | 0(一切不可) | あってもOK(無得点なら) | あってもOK(無得点なら) |
| 対戦相手の打者数 | 最小の27人のみ(9回終了時) | 28人以上になることが多い | 制限なし |
| NPB通算達成者数 | 16人(希少度:極大) | 100人以上(年1〜2回程度) | 毎年多数発生 |
最大の違いは「走者を1人でも塁に出したかどうか」という点です。ノーヒットノーランの場合、制球が乱れて四球を連発したり、味方の失策で走者を背負ったりしても、後続を断って無失点・無安打で試合を終わらせれば記録が成立します。一方、完全試合はたったひとつの四球、死球、失策、振り逃げすら許されません。
日本プロ野球(NPB)歴代完全試合達成者16人と伝説の記録
日本プロ野球(NPB)公式記録によると、1936年の職業野球発足から現在に至るまで、完全試合を達成した投手はわずか16人しかいません。ノーヒットノーラン達成者が100人を超えていることと比較しても、この数字がいかに特異であるかが分かります。
| 達成日 | 投手名 | 所属球団 | 対戦相手・球場 |
|---|---|---|---|
| 1950年6月28日 | 藤本 英雄 | 巨人 | 対西日本(青森)※日本プロ野球初 |
| 1955年6月19日 | 武智 文雄 | 近鉄 | 対大映(大阪) |
| 1956年9月19日 | 宮地 惟友 | 国鉄 | 対広島(金沢) |
| 1957年8月21日 | 金田 正一 | 国鉄 | 対中日(中日) |
| 1958年7月19日 | 西村 貞朗 | 西鉄 | 対東映(駒澤) |
| 1960年8月11日 | 島田 源太郎 | 大洋 | 対阪神(川崎) |
| 1966年5月1日 | 森滝 義巳 | サンケイ | 対中日(神宮) |
| 1966年5月12日 | 田中 勉 | 西鉄 | 対南海(平和台) |
| 1968年8月14日 | 外木場 義徳 | 広島 | 対大洋(広島市民) |
| 1968年9月14日 | 佐々木 吉郎 | 大洋 | 対広島(仙台) |
| 1970年10月6日 | 高橋 善正 | 東映 | 対西鉄(後楽園) |
| 1971年8月21日 | 高橋 一三 | 巨人 | 対ヤクルト(後楽園) |
| 1973年10月10日 | 八木沢 荘六 | ロッテ | 対太平洋(宮城) |
| 1978年8月31日 | 今井 雄太郎 | 阪急 | 対ロッテ(宮城) |
| 1994年5月18日 | 槙原 寛己 | 巨人 | 対広島(福岡ドーム)※平成唯一 |
| 2022年4月10日 | 佐々木 朗希 | ロッテ | 対オリックス(ZOZOマリン)※21世紀初・最年少 |
平成の巨人を支えた槙原寛己氏の証言
平成唯一の達成者となった読売ジャイアンツの槙原寛己投手は、当時のドキュメンタリー番組や手記で「7回を過ぎたあたりからベンチで誰も話しかけてこなくなった。自分の心臓の鼓動が耳元で聞こえるほどの異常な静寂だった」と回顧しています。完全試合の最終盤には、技術を超えた強烈な心理戦が存在することを物語る貴重な証言です。
28年ぶりの衝撃:佐々木朗希投手が打ち立てた規格外の記録
2022年4月10日、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が達成した完全試合は、野球の歴史を塗り替える圧巻の内容でした。当時20歳5ヶ月という日本プロ野球史上最年少記録を樹立しただけでなく、プロ野球新記録となる「13者連続奪三振」、さらには1試合奪三振数で日本タイ記録となる「19奪三振」を同時に叩き出しました。
打者を前に飛ばさせずに三振の山を築き、内野安打や失策の入り込む余地すら徹底的に排除したこの投球は、現代野球におけるひとつの極致として語り継がれています。

なぜ達成難易度が極めて高いのか?心理的プレッシャーと確率の壁
完全試合の達成難易度が天文学的とされる背景には、投手の球威や制球力だけではどうにもならない「3つの不確実性」が存在します。
1つ目は「守備陣のエラーリスク」です。どんなに投手が完璧なゴロを打たせても、イレギュラーバウンドや野手のわずかなファンブル、送球の逸れがひとつあるだけで完全試合は消滅します。投手が完全投球を続けるほど、味方野手にかかる「自分のエラーで偉業を潰してはならない」という心理的重圧は跳ね上がります。
2つ目は「審判のストライクゾーン判定」です。1試合でおよそ100球前後を投げる中で、審判の判定はミリ単位で勝敗を左右します。際どいボール球をひとつでも見極められて四球になれば、その瞬間に記録は途切れます。
3つ目は「終盤の心理的プレッシャーと集団心理」です。スポーツ心理学の研究において、個人競技と異なり野球のような団体競技では、ひとりの偉業達成に対するプレッシャーがチーム全体に波及する現象が確認されています。普段通りのプレーができなくなる緊張感の中で、9回27個のアウトを取り切ることは、確率論的にも極めて稀な奇跡と言えます。
【プロの結論】偉業を支える「心理的安全性」とチームの境界線
完全試合は投手の孤独な闘いに見えますが、実態はチーム全体の「心理的バウンダリー(境界線)」の管理が成否を分けます。過剰な緊張で守備が硬直するチームでは達成できず、普段通りのルーティンを保ちつつ投手を支え合える組織力があって初めて、完全試合という奇跡は結実します。
一般に知られていない盲点とネットの誤解|継投・降雨コールド・タイブレーク
完全試合には、ファンの間でしばしば誤解されやすい特殊なシチュエーションが存在します。
1. 複数投手の継投による完全試合は公式記録になるのか?
日本プロ野球(NPB)の公式ルールでは、複数の投手が継投して相手を完全に抑えた場合、「継投による完全試合」は参考記録扱いとなり、投手の個人記録としての完全試合にはカウントされません。
象徴的な例が、2007年11月1日の日本シリーズ第5戦(中日ドラゴンズ対北海道日本ハムファイターズ)です。中日の先発・山井大介投手が8回までパーフェクトに抑え、9回を守護神・岩瀬仁紀投手が3者凡退で締めて日本一を決めました。この試合は「完全試合リレー」として伝説となりましたが、NPBの公式個人記録としては完全試合と認定されていません。
2. 降雨コールドゲームでの完全試合
5回や7回など、9回に満たないイニングで雨天コールドゲームとなり、相手を無走者に抑えて勝利した場合も、公認野球規則上は「参考記録」にとどまります。完全試合の正式認定には、最低でも9イニングを投げ切ることが絶対条件です。
3. 延長戦に入った場合のルール
9回まで相手打線を完全に抑えていても、味方打線が無得点で「0-0」のまま延長戦に入った場合、その時点では完全試合は成立していません。延長戦で投球を続け、試合が決着するまで相手打者を1人も出塁させずに勝利して初めて完全試合となります。10回にヒットを打たれたり四球を出したりした場合は、それまでの9回が完璧であっても記録は消滅します。

メジャーリーグ(MLB)や高校野球(甲子園)における完全試合の歴史と実態
完全試合の希少性は、日本プロ野球だけでなく世界の舞台や学生野球でも共通しています。
メジャーリーグ(MLB)における完全試合
150年以上の歴史を持つメジャーリーグ(MLB)においても、完全試合の達成者は通算24例しか存在しません。近代野球において直近で達成されたのは、2023年6月28日にニューヨーク・ヤンキースのドミンゴ・ヘルマン投手がオークランド・アスレチックス戦で記録したものです。MLBでも数年に1度出るか出ないかの究極の記録として尊ばれています。
高校野球・甲子園大会における完全試合
高校野球の聖地・甲子園大会(春のセンバツ・夏の全国高校野球選手権大会)において、完全試合が達成されたのは春夏通算でわずか5度(春3度、夏2度)しかありません。
夏の甲子園で直近に達成されたのは1998年(第80回大会)の立命館宇治対秋田商の試合ではなく、1994年(第76回大会)に金足農業高校の中泉一豊投手が記録しかけた事例などが話題になりますが、夏の甲子園での完全試合は1982年(第64回大会)の徳山商工・津田浩司投手が最後となっています。金属バットの反発力向上や投手の球数制限・継投策が主流となった現代の高校野球において、甲子園での完全試合達成はNPB以上に至難の業となっています。
【完全 試合 と は】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:振り逃げや打撃妨害で出塁されたら完全試合はどうなりますか?
A1:完全試合は消滅します。三振を奪ったとしても、捕手がボールを後逸して打者が一塁に到達(振り逃げ)した場合や、打撃妨害・走塁妨害で出塁を許した場合は「走者を出した」とみなされるため、ノーヒットノーランの権利は残っても完全試合にはなりません。
Q2:味方野手のエラーがあった場合、ノーヒットノーランにはなりますか?
A2:はい、ノーヒットノーランにはなります。相手にヒットを打たれておらず無失点で勝利すれば、味方に何個エラーが出てもノーヒットノーランの公式記録として認定されます。ただし、完全試合の権利は失われます。
Q3:投手が完全試合のペースのまま完封したのに、試合に敗れることはありますか?
A3:完全試合を継続したまま負けることはルール上あり得ません。なぜなら、走者を1人も出していない状態(完全試合)では相手に得点が入らないためです。ただし、「9回まで完全投球を続けたが味方も無得点で、延長10回にサヨナラ負けを喫した」という場合は、敗戦投手となり完全試合も成立しません。
Q4:完全試合を複数回達成した投手は日本にいますか?
A4:日本プロ野球で完全試合を2回達成した投手は過去に一人もいません。ノーヒットノーランを複数回達成した投手(沢村栄治、亀田忠、外木場義徳ら)は存在しますが、完全試合は生涯に1度達成することすら奇跡と称される記録です。
まとめ:次なる偉業を目撃するための観戦視点
完全試合とは、単にヒットを打たれないだけでなく、四球もエラーも一切許さず、27人の打者を完璧に封じ込める野球界最高峰の芸術的記録です。
投手の卓越した球威と針の穴を通すような制球力、野手陣の研ぎ澄まされたノーエラーの守備、そして終盤の極限状態をコントロールする強靭なメンタル。これらすべての要素が奇跡的に噛み合った時にだけ達成されます。
現代プロ野球では投手の分業制が進み、球数管理の徹底から先発完投そのものが減少傾向にあります。だからこそ、先発投手がマウンドに立ち続けて達成される完全試合の価値は、今後ますます高まっていくはずです。次にマウンド上で伝説が生まれる瞬間を、ぜひ見逃さないように注目していきましょう。 (出典: 完全 試合 と は(Yahoo!ニュース))