リコーダーのファのシャープ運指解説!ジャーマン式とバロック式の違い
小学校や中学校の音楽の授業、あるいは大人の趣味としてリコーダーを演奏している際、多くの人が最初にぶつかる大きな壁が「ファのシャープ(ファ# / F#)」の演奏です。「楽譜通りに指を押さえているはずなのに変な音が鳴る」「高音のファ#がかすれて音が出ない」と頭を抱えるケースは珍しくありません。
実は、リコーダーのファ#が出ない最大の原因は、単純な練習不足ではなく「ジャーマン式」と「バロック式」という楽器の規格違いや、指穴の微細な隙間、サミング(左手親指のコントロール)技術の不足にあります。本稿では、ソプラノリコーダーとアルトリコーダーにおける正しい運指表から、プロが実践する綺麗な音を鳴らすための身体操作まで、徹底的に解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:ファのシャープは「ジャーマン式」と「バロック式」で運指が根本的に異なり、互換性がない。
- 要点2:低音は右手のフォークフィンガリングと密閉度、高音は「サミング(左手親指の隙間調整)」と息圧のバランスが命。
- 要点3:アルトリコーダー(F管)とソプラノリコーダー(C管)の楽譜の読み替えによる運指の混同に注意が必要。
【決定的な違い】ジャーマン式とバロック式でファのシャープ運指が異なる理由
リコーダーの運指を調べる前に、まず手元の楽器が「ジャーマン式(ドイツ式)」なのか「バロック式(イギリス式)」なのかを判別しなければなりません。日本の小学校で一括購入されるソプラノリコーダーの多くはジャーマン式ですが、中学校で扱うアルトリコーダーや本格的なアンサンブル用モデルはバロック式が標準です。
この2つの規格は、管体に開けられた「上から4番目と5番目の穴の大きさ」で見分けることができます。
- ジャーマン式:上から4番目の穴が大きく、5番目の穴が小さい。
- バロック式:上から4番目の穴が小さく、5番目の穴が大きい。裏側に「E(English)」または「B」の刻印がある。
ファとファシャープの違いにおいて、ジャーマン式は「ハ長調(C major)のファ」を指を順番に塞ぐだけで簡単に出せるよう改良された歴史があります。しかしその代償として、半音階である「ファのシャープ」や高音域のピッチ(音程)が極めて不安定になり、複雑な替え指を余儀なくされる構造的弱点を抱えています。
一方、古くから伝わるバロック式は、通常のファで「フォークフィンガリング(1本飛ばして塞ぐ指使い)」を必要とする反面、ファのシャープをはじめとする全ての半音階が正確かつ美しい響きで鳴るよう音響工学的に設計されています。

【運指一覧表】ソプラノ・アルト別「低いファ#」「高いファ#」の完全ガイド
楽器の種類(ソプラノ=C管、アルト=F管)と、演奏したいオクターブ(低音・高音)ごとの正確な運指データを整理しました。数字は、上から「裏穴(左手親指)=0」「左手人差し指=1」「中指=2」「薬指=3」「右手人差し指=4」「中指=5」「薬指=6」「小指=7」を表します。
| 楽器と音域 | バロック式の運指(推奨) | ジャーマン式の運指 | 演奏難易度と注意点 |
|---|---|---|---|
| ソプラノ・低いファ# (第1オクターブ) | 0, 1, 2, 3, 5, 6 (4番を開け、5・6を塞ぐ) | 0, 1, 2, 3, 5 (または0, 1, 2, 3, 5, 6の片方) | ★☆☆☆☆ 右手人差し指を浮かせる感覚を掴む。 |
| ソプラノ・高いファ# (第2オクターブ) | サミング, 1, 2, 3, 5 (裏穴を1/3程度開ける) | サミング, 1, 2, 3, 5, 7 (楽器個体差で要微調整) | ★★★☆☆ 親指の爪の立て方と息のスピードが必須。 |
| アルト・実音F# (最低音の半音上) | 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7の片穴 (ダブルホールの1つだけ塞ぐ) | (アルトは原則バロック式のみ) | ★★★★☆ 右足小指の正確な半開技術が要求される。 |
| アルト・中央のF# (中音域の実音F#) | 0, 1, 2, 3, 4, 6 (5番を開けるフォーク運指) | (同上) | ★★☆☆☆ ソプラノの「低いシ♭」と同じ指の並び。 |
ソプラノリコーダーにおける低いファのシャープは、右手人差し指(4番)をスキップして中指・薬指(5番・6番)を押さえる形状になります。この「1本だけ穴を開けて下を塞ぐ」指使いこそが、管内の気柱に複雑な波動を起こし、半音高い周波数を生み出す仕組みです。
【なぜ鳴らない?】ファのシャープで音が出ない理由と穴の塞ぎ方
運指表通りに指を置いているにもかかわらず、「ピー」という甲高い裏返り音が出たり、スカスカとした空気音にしかならない場合、以下の4大要因のいずれかに該当しています。
1. 右手の「4番を開けながら5・6番を完全に塞ぐ」指の緊張
人間の手の構造上、人差し指を上げると隣の中指や薬指まで一緒に持ち上がろうとする筋肉の連動(腱の拘束)が起こります。そのため、4番の穴をしっかり開けようとするあまり、5番や6番の穴にわずかな隙間が生じて空気が漏れているケースが現場の指導でも全体の約7割を占めます。
指の腹(指紋の渦の中心)をペタッと吸盤のように吸い付かせ、指関節を固めずに脱力して穴を覆う穴の塞ぎ方を反復練習してください。
2. 息の強さ(息圧)とスピードのミスマッチ
ファ#のようなフォークフィンガリングを多用する音は、通常のドレミファよりも管内の空気抵抗が不安定です。低いファのシャープを吹くときは、温かい息(手にかざしたときにホッとする温度の息)をゆっくり均一に吹き込むのが綺麗な音を出す吹き方の基本です。息が強すぎると一瞬で1オクターブ上に跳ね上がってしまいます。
3. 楽器の個体差とピッチのズレ
安価なプラスチック製ジャーマン式リコーダーの場合、金型の設計上ファ#のピッチが極端に上ずったり低くなったりすることがあります。音が濁って聞こえる場合は、一番下の小指の穴(7番)をわずかに塞ぐ・開けるなどの微調整を試みるのが有効です。

【高音攻略】サミングのコツと息のスピードコントロール
楽曲の中で頻出する高いファのシャープを綺麗に鳴らすためには、左手親指の技術である「サミング」の精度が演奏の完成度を左右します。
- 爪の左側で穴を「三日月型」に開ける:親指を完全に離すのではなく、親指の関節をクイッと手前に曲げ、爪の角を使って裏穴の上部を「1mm〜2mm」だけ開けます。
- 隙間を大きく開けすぎない:穴が半分以上開いてしまうと倍音が破綻し、高音のファ#は絶対に鳴りません。「爪の隙間からわずかに息を逃がす」イメージです。
- 鋭く細いスピード感のある息:低音域とは対照的に、冷たい息をストローの先から遠くのロウソクの炎に向けて細く吹き込む感覚で息圧を高めます。
口の中の容積を狭め、舌の位置を少し高め(母音の「イ」を発音する口の形)に保つことで、息の流速が自然に上がり、高音域のファ#がクリアに立ち上がります。
【実態検証】教育現場とネットの知恵袋で多発する「アルトとソプラノの混同」
音楽教室や知恵袋などのQ&Aコミュニティで定期的に見られる深刻な混乱が、「ソプラノリコーダーとアルトリコーダーの調性(調号)の違いによる錯覚」です。
ソプラノリコーダーは「C管(ドの音を基準とする楽器)」であり、すべての指を塞ぐと「ド」の音が出ます。対してアルトリコーダーは「F管(ファの音を基準とする楽器)」であり、すべての穴を塞いだ最低音は「ファ」になります。
中学校でアルトリコーダーを手にした際、ソプラノと同じ指使い(0, 1, 2, 3, 5, 6)をしてしまうと、鳴る音はファ#ではなく「実音のシのフラット(B♭)」になってしまいます。楽譜に書かれている音符が「アルト用の運指譜」なのか「実音表記」なのかを正しく把握しない限り、どれだけ正確に指を動かしても周囲の演奏と音が完全にズレてしまうため注意が必要です。
【プロの結論】確実に習得するための練習法と最適な選び方
リコーダーのファのシャープを安定して鳴らすための練習アプローチと、目的別の楽器選定基準を提示します。
ファのシャープを確実にものにする3ステップ練習法
- ロングトーンでの音色確認:まずは指を「ソ(0, 1, 2, 3)」から1本ずつ下ろしていき、低いファ#のポジションで息を均一に保ちながら3秒間真っ直ぐ伸ばす練習をします。
- 「ソ ↔ ファ# ↔ ソ」のトリル反復:右手の中指と薬指を同時に素早く落とし、隙間なく着地させる筋肉の反射を鍛えます。
- 低音から高音へのオクターブ跳躍:低いファ#を吹いた状態から、左手親指をサミングの位置へシフトし、息のスピードを上げて高いファ#へ滑らかに移行させます。
【判断基準】楽器の選び方・買い替えの目安
- ジャーマン式を選ぶべき人:小学校の音楽授業でのみ使用し、ハ長調やト長調の単純な童謡・合奏曲をスムーズに演奏したい小学生。
- バロック式を選ぶべき人(強く推奨):中学校以上の吹奏楽・授業、ポップスやクラシックの独奏、大人の趣味としてあらゆる調性の曲を美しい音程で演奏したい全ての人。
【リコーダー ファ の シャープ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ジャーマン式リコーダーで高いファ#を綺麗に鳴らすのは不可能ですか?
A1:不可能ではありませんが、構造上ピッチが著しく狂いやすいです。右手小指で7番穴を半分塞いだり、管の底を手や太ももで部分的に塞いで気柱長を変える特殊な「替え指(シェーディング)」が必要になる場合があり、バロック式に比べて大幅に難易度が上がります。
Q2:低いファ#を吹くと、どうしても1オクターブ高い音になってしまいます。
A2:息の吹き込みが強すぎるか、左手親指の裏穴(0番)が完全に塞がっておらず、無意識にサミング状態になっていることが原因です。親指をしっかりと穴に密着させ、ローソクの炎を揺らさないような極めて静かな温かい息で吹いてみてください。
Q3:指が小さくて4番を開けながら5・6番を押さえるのが届きません。
A3:リコーダーを構える角度を見直してください。楽器を体に対して45度程度に保ち、右腕の肘を少し体側に引き寄せることで、指の可動域が広がり無理なく穴を塞げるようになります。指先ではなく「指の腹の柔らかい部分」を使うのがコツです。
まとめ:正しい運指と息のコントロールで美しいファ#を響かせよう
リコーダーにおける「ファのシャープ」は、単なる1つの音階にとどまらず、楽器のメカニズム理解と繊細な身体操作が試される重要な関門です。ご自身の楽器がジャーマン式かバロック式かを正しく見極めた上で、適切な運指を選択し、指の脱力とサミングの微調整を意識して練習を重ねてください。
指穴の密閉と安定した息のスピードさえ体得できれば、濁りのない透き通った美しいファ#が確実に鳴り響くようになります。ぜひ本稿の運指表を参考に、表現力豊かなリコーダー演奏を楽しんでください。 (出典: リコーダー ファ の シャープ(Yahoo!ニュース))